「故意でない(わざとではない)基準」への緩和について
令和5年4月1日から、期間徒過後の救済の回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」(故意でない基準)に緩和されました。
令和5年4月1日施行の法改正の内の1つであって、施行日から既に6か月経過しておりますが、重要な改正ですので当日施行の法改正の中から本改正をピックアップして紹介します
[対象]
対象となる期限は以下などです。
・出願審査請求の期限
・優先権主張の期限
・翻訳文の提出期限
・特許料や登録料の追納期限
・特許(等)管理人選任の届出期限
[回復の主な要件]
手続が回復される主な要件は以下の通りです。
①手続をしなかった理由が「故意でない」こと
例えば、期限を失念した場合などは「故意でない」に該当します。
「故意」に該当するのは、社内(共有者を含む)方針転換、社会情勢の変化、などにより、期間経過後に手続きを行おうとした場合です。
なお、出願審査請求に関する場合はさらに、「出願審査の請求を遅延させることを目的とするものではなかった旨」の記載が必要となります。
②所定期間内に回復手続をすること
手続ができるようになった日(通常は「徒過に気づいた日」)から2か月以内で、かつ、手続期間経過後1年以内(商標のみ6月以内)に、回復理由書の提出が必要となります。
通常の、手続にかかる印紙代(例えば審査請求料等、手続に必要な手数料)の他に、回復手数料の印紙代が必要となります。特許で212,100円、商標で86,400円、(実用新案・意匠については約2万円程度)です。
ただし、不責事由がある場合にはこの回復手数料が免除されます(注1参照)。
注1:不責事由とは、「出願人等の責めに帰することができない理由」のことです。なお免除のためには、不責事由の証拠の提出が必要となります。
また、不責事由とは具体的には、天災地変のような場合(大地震等の災害の他、公共インフラ、通信等の障害を含む)のほか、通常の注意力を尽くしてもなお避けられなかった場合(注2参照)です。
よって、「状況に応じたしかるべき措置を講じたにもかかわらずに発生した場合」(正当な理由がある場合)ではあっても「通常の注意力を尽くした」とは言えない場合、すなわち、正当な理由には該当するが不責事由とは言えない場合は、回復手数料の免除対象にはならないことになります。
注2:正確には、「天災地変のような客観的な理由にもとづいて手続をすることができない場合」のほか、「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由」です。